Bluetooth 6.0の新機能まとめ
Bluetooth 6.0の進化した特徴とポイントを解説
概要
Bluetooth 6.0は、これまでのBluetooth規格を大きく進化させた最新バージョンです。
「Bluetooth 6.0の新機能」や「Bluetooth 6.0の特徴」を知りたい方に向けて、本記事ではその技術や用途を解説します。
Bluetooth 6.0以前のバージョンにおける課題
これまでのバージョンでは、いくつかの課題が指摘されてきました。たとえば、デバイス間の距離測定が環境の影響を受けやすかったり、複数のデバイスが存在する環境で通信効率が低下したりすることがありました。また、リアルタイム性が求められるアプリケーションでは、わずかな遅延が問題となるケースもありました。
特に測距技術については、その精度の確保が難しく、ノイズの多い実際の環境では実現が難しいことがありました。しかし今回のアップデートでは、特にこの測距技術が改善されたことにより、例えば車両のキーレスエントリー等、正確な測距が必要なアプリケーションでも検討が進みそうです。
次の章からは、具体的にどのような技術が追加されたのか見て行きましょう。
【以前のバージョン】
信号情報が変わってしまう
→距離情報の誤認識
→正しく鍵開閉できない

【Bluetooth 6.0】
信号情報が変わらない
→距離情報を正確に認識
→正しく鍵開閉できる

Bluetooth 6.0の新機能
Bluetooth
6.0は2024年8月にリリースされ、通信の効率性や精度、セキュリティーを大幅に向上させた次世代の規格です。測距精度を高める「Bluetoothチャネルサウンディング」や、スキャン効率を向上させる「任意のアドバタイジングフィルタリング」、リアルタイム性を強化する「ISOALの改良」など、多彩な新機能が追加されました。
これらの進化により、IoTやスマートデバイス間の接続がさらにスムーズになり、幅広い用途での活用が期待されています。これから、Bluetooth
6.0の革新的な新機能について解説していきます。

Bluetoothチャネルサウンディング
新機能「Bluetoothチャネルサウンディング」は、
- ・位相ベースの測距(PBR: Phase-Based Ranging)
- ・往復時間ベースの測距(RTT: Round-Trip Timing)
上記2つの距離測定方法を単独または組み合わせて利用することで、従来のパスロス法よりも正確で信頼性の高い距離測定を実現します。
この技術は、干渉や環境要因の影響を受けにくく、多くのセキュリティーメカニズムを備えており、中間者攻撃やリレー攻撃を防止します。また、紛失タグの位置特定精度の向上や、スマートロックや車両のキーレスエントリーなど、利便性と安全性を高める幅広い用途での活用が期待されています。
今回は測距方法について取り上げます。
従来のパスロス法では、信号の強度(受信信号強度、RSSI: Received Signal Strength
Indicator)を基に、送信機と受信機の間の距離を推定していました。距離に応じてRSSIが減衰することで、送信機からの距離を推定しますが、信号到達までの間に障害物があり、吸収や回折などがあると、減衰量が変わります。このため、その誤差は数メートルありました。

対して、今回のチャネルサウンディング技術では、二つのデバイスを「イニシエータ=信号送信」と「リフレクタ=信号返送」と定義し、両者の通信により測距します。
まずPBRでは、イニシエータの送信信号と、リフレクタからの受信信号の位相を測定します。これらの信号の位相を比較し、両者の相対距離を算出します。

またRTTでは、飛行時間(ToF: Time of Flight)を使用して、イニシエータとリフレクタ間の距離を算出します。到着時刻(ToA: Time of Arrival)と出発時刻(ToD: Time of Departure)が、イニシエータ→リフレクタおよびリフレクタ→イニシエータの両方の場合について記録され、それらの差分から距離算出されます。なおリフレクタの受信→返信までの処理時間も計算に入ります。

上記PBRとRTTを組み合わせて、チャネルサウンディングの誤差は20cmが目前となっています。
なお、Bluetooth 5.1で規定されたAoA:Angel of Arrival、AoD:Angle f
Departureの技術は、受信および送信無線信号の角度から測距するものです。誤差1メートル未満の精度も可能ですが、アンテナに到達する信号の確度に依存するため、障害物や反射が多い状況では信頼性が低いです。
またアンテナ設計も考慮する必要があります。
これらの背景を解消するため、新しくチャネルサウンディングが規定されました。
任意のアドバタイジングフィルタリング
「DBAF: Decision-Based Advertising Filtering」とBluetooth
SIGでは表現されている、アドバタイズチャネルのフィルタリング機能が追加されました。
もともとBLEでは、アドバタイズチャネルを用いて周辺デバイスを検出しています。これにDBAF機能を追加し、スキャンデバイスは、プライマリーアドバタイズチャネルで受信したパケットのコンテンツを使用して、次にセカンダリチャネルで関連するパケットをスキャンするかどうかを決定することができます。これにより、不要なPDU(Protocol
Data Unit)を含むフレームをスキャンする手間を省き、スキャン効率を向上させています。

アドバタイザの監視
以前のバージョンでは、Bluetoothデバイスが近くにあるか確認するには、頻繁にスキャンを行う必要があったが、そのためにはエネルギーを浪費する可能性がありました。
これに対して、今回追加された機能は、HCI: Host Controller Interfaceイベントを使用して、対象デバイスが範囲内外に移動するたびにホストへ
通知することが可能になりました。これにより、Bluetoothデバイスの範囲内外検出において、エネルギー消費を削減できるようになりました。

ISOALの強化
ISOAL: Isochronous Adaptation
Layerは、大きなデータ・フレームを、より小さなパケットに分割して伝送することを可能にしています。一方この分割されたデータを復元する際、遅延が生じることがあり、アプリケーションによっては懸念がありました。
今回の機能追加により、この遅延を短縮する新しいフレーミングモードが定義され、リアルタイム性が向上しています。

リンク・レイヤ機能拡張
リンク・レイヤーには、さまざまな機能が含まれています。Bluetoothデバイスは、これらの機能の中から、自分がサポートしているものだけを利用します。
Bluetoothデバイス同士が通信を開始する際に、お互いがサポートしているリンク・レイヤーの機能について情報を交換し、最適な通信方法を選ぶことができます。
Bluetooth LE
の高度化と多機能化に伴い、より多くの機能をサポートするために、リンク・レイヤーは機能強化されてきた。今回のアップデートでも、さらに機能強化され、デバイスがサポートする機能に関する情報をよりたくさん交換できるようになりました。これにより、将来的なBluetoothの機能拡張が対応可能となります。

フレーム間隔の更新
以前のバージョンでは、隣接するパケットの送信を区切るための時間間隔が150usの固定値で定義されていました。今回のアップデートで、この間隔が任意(0~10,000us)に変更できるようになりました。
これにより各アプリケーションに求められるスループット等の要求に柔軟に対応することができるようになります。

Bluetooth 6.0の適用アプリケーション例
Bluetooth 6.0では、大きく6つの機能が追加されましたが、その中でも特にチャネルサウンディングによる測距精度向上が注目されています。この測距精度の向上により、以下のアプリケーションにおける応用が期待されています。
- ・ペット追跡機能、アセットトラッキング
- ・車両のキーレスエントリー
- ・スマートロック
- ・ジオフェンシング
まとめ
Bluetooth
6.0は、通信の効率性や精度、セキュリティーの向上を実現し、多くの新機能を備えた次世代規格です。測距精度の向上やスキャン効率の改善、リアルタイム性の強化といった進化により、IoTやスマートデバイスをはじめとする幅広い分野での活用が期待されています。
また、キーレスエントリーやスマートロック、アセットトラッキングといった具体的な用途にも対応し、私たちの生活やビジネスに新たな価値をもたらす可能性を秘めています。
引き続き、Bluetooth技術の進化に注目していきましょう。